檜造りの菊池建設　スタッフブログ

こんにちは。　菊池建設の sugar です。


日頃から気になっていたことや、わからないままにしていたことを解明するシリーズ（？）である「日常の世迷言」ですが、今日は昨日書きました「天智天皇」について、引き続きお話しします。


昨日書きましたように、「天智天皇は悪王であった」というのは本当なのでしょうか？

http://kikuchistaffblog.eshizuoka.jp/e928841.html


このことを知る手掛かりとなるのが、これまた昨日ご紹介した「諡号（しごう）」なのです。

実はこの天皇の諡号を順序立ててきちんと研究したのは、日本広しといえ、後にも先にもあの明治の文豪「森　鴎外」ただ一人だといいます。
というのは、諡号を分析するのには、当時中国や朝鮮半島に伝わる歴史書などを豊富に読み解き、その中に書かれていたさまざまなしきたりや慣例について精通していなければなりません。

しかし、当然のことながら、それらは漢文で書かれた漢書であり、それらをすらすら読めて、つまり精通していて諡号を精確に分析できるのは「森　鴎外」しかいなかったのです。

現代の学者が束になっても、これらの漢書を読み解くには非常に困難なのだそうです。
小さな頃から漢文を学び、「論語」や「荘子」を当たり前のように読み、「春秋左氏伝」や「塩鉄論」といった歴史書を全部ラクラク読めるぐらいの並外れた漢文の素養がないと、諡号の研究はできないからです。

さて、あまり知られていませんが、その「森　鴎外」が書いた文章に「帝諡考（ていしこう）」というものがあります。
これが歴代天皇の漢風諡号（一方で和風諡号というものもありますが、ここでは漢風諡号のことを指します）を精確に分析した名著なのです。
とは言っても、この文章自体が漢文で表されているので、私などではとても読めないシロモノです。


さて、前置きが長くなりましたが、「天智天皇」の諡号はどこから取られたのかというと、結論から言ってしまうとそれは古代中国の殷王朝に由来するといいます。

「殷」は「商」とも言います。「商」というのは民族名で、例えば「日本」というのは国名ですが、その国を治めているのは主に「大和民族」です。（「主に」と言ったのは厳密に言うと「アイヌ民族」もいるからです。）
つまり、「殷」という国に住んでいたのが「商」という民族なのです。

この「殷」（商）の最後の王様は「紂王（ちゅうおう）」という人です。


　　＜　殷の紂王　＞

この人は「酒池肉林」という言葉がありますが、民には貧困や重税を押し付ける一方で自分とその取り巻きはそのような贅沢三昧の暮らしをしていたと伝えられる人物で、それだけではなく、「炮烙（ほうらく）の刑」といって猛火の上に油を塗った銅の丸木橋のようなものを渡し、その上を人を渡らせて滑って落ちて死ぬところを見て楽しんでいたという非道な人だったとも伝えられています。
それ以外にも様々な悪行を重ねた、中国史上最悪の王と伝えれらている人物なのです。

この「紂王」が、その悪政に我慢がならず蜂起した臣下の「武王」に追い詰められて最後は焼身自殺をして生涯を閉じるのですが、この時に身につけていたのが「天智玉（てんちぎょく）」という首飾りだったといいます。
ちなみに「武王」はこうして「紂王」を倒し、新しい王朝を開きます。
「殷」王朝に代わって「周」王朝の誕生です。



さて、通常、「天智」と聞けば、「天下」の「天」に「智徳」の「智」の組み合わせですから、非常にいい字を使ったいい名前（諡号）のように思えますが、実はそういう歴史に基づいた故事から取っていたわけです。

わかりやすく言えば、「天智天皇」は殷の「紂王」のように「日本史上最悪の王」だったということを暗に示しているのです。
「天智玉」を身につけていたのが中国史上最悪の王・紂王ならば、「天智」はどうみても悪い意味です。
悪い王の身につけていた首飾りの名前を天皇の諡号にしたのは、なにやら悪意が感じられますよね。（これにも実は深い意味が隠されているのですが・・・）


そして、その天智天皇の後継を巡って、天智天皇の息子である「大友皇子」と天智天皇の弟である「大海人皇子」が争うわけですが、これが６７２年の「壬申の乱（じんしんのらん）」なのです。

ご承知のように、この「壬申の乱」は「大海人皇子」が勝利し、次期の天皇に就きます。
「天武天皇」の誕生です。



「天智」という諡号にはこんな意味があったのですね。

なかなかに興味深いことです。


ところで、「天武天皇」（大海人皇子）の「天武」という諡号にはどんな意味があるのでしょう？





（以上、 sugar こと　相川正也　でした。）
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