2015年03月15日

すこぶる を考える

こんにちは。菊池建設の sugar です。

日頃から気になっていたことや、わからないままにしていたことを解明するシリーズ(?)である「日常の世迷言」ですが、今日も以前から気になっていたことについて、お話しします。



今日は「すこぶる」についてです。


普段なにげなく本を読んでいると、「読める漢字だし以前にも聞いた言い回しだけど、自分では普段の会話では使わないなぁ・・・」と思う言葉というものがあります。
その中には、「この漢字はこの言い回しの時にしか使わないよなぁ。」と思うことがありまして、その漢字が妙に気になるのです。
こんなふうに言いますと何やらよくわからないと思いますので、例を挙げてみることにします。

例えば、「すこぶる」という言葉。漢字で書くと「頗る」と表記します。

すこぶる を考える


これなんかは、意味はわかるけれど普段の会話ではまず使わない言葉の一つです。

そして、この「頗る」という漢字は、私はこの「すこぶる」と書くときにしか見たことがありません。
もしかしたら、これを読んでいる方の中には「それ以外の時にも使う場合を知ってるよ。」という方がいらっしゃるかもしれませんが。

さて、この「すこぶる」という言葉ですが、まず私はその語感にヤラレました。日本語らしからぬ語感をそこに感じたのです。「すこ」に「ぶる」ですもん。
「とても」とか「すごく」「たいそう」という意味で、「私はすこぶる元気です」などと使います。
しかし、実は元々はその正反対の意味の言葉だったことはあまり知られていません。

前半の「すこ」は「少し」の語源となった「すこ」で、もちろん意味合いも「少しの」「少量の」というものでした。
後半の「ぶる」は、偉そうにする時に使う「えらぶる」や「大人ぶる」、「もったいぶる」という言葉の語尾に付いている「いかにもそれらしい素振りをする」の「振る(ぶる)」なのです。

つまり、元々の意味は「少し ・ 振る」わけですから、「少し」「ちょっと」「いささか」という意味でした。
これが、中世以降、どういういきさつかは不明のようですが、前記の通り「とても」とか「すごく」「たいそう」という意味に転じたのです。
言ってみれば、正反対の意味ですよね。
これが、不思議でした。

何故正反対の意味になったのか?の理由は不明ということですが、どうやら元の漢文を翻訳するときに混乱が生じて誤訳されたのではないか、と推察されています。
言葉の意味が時代によってニュアンスが若干変わって行くということはよくあるのですが、この「すこぶる」のように正反対の意味になった言葉は極めて珍しいと思います。


それから、この「頗」という漢字。変な漢字だとは思いませんか?
変だというのはなんとなくなんですが、居心地が悪いというか字面が落ち着かない気がするのです。
「皮」に「頁」を加えて「頗る」で「すこぶる」・・・。

余談ですが、「皮」に「頁」・・・と聞くと「皮→革」と「ページ→手帖」から小説『黒革の手帖』    (松本清張 作)を連想して、あの松本清張氏の分厚いクチビルを思い浮かべてしまいます。(笑)

すこぶる を考える 
  <松本清張 氏が頭の皮を少し引っ張って「すこぶる」を体現している稀有な画像>

実はここでの「頁」とは「頭」を意味しているそうで、その頭の皮を引っ張ると頭が傾くところから「かたよる」「かたむく」「不公平だ」という意味があるのです。
何故、そんな意味の字が「すこぶる」に当てられたのか・・・?
「頭の皮を引っ張る」といっても少ししか引っ張れないから「少し」「ちょっと」という意味の言葉に当てられたのでしょうか?
でも、後世それが正反対の意味になる・・・


ますます謎は深まるばかりです。すこぶるね。





(以上、 sugar こと 相川正也 でした。)
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