2014年05月09日
万能細胞
こんにちは。菊池建設の sugar です。
日頃から気になっていたことや、わからないままにしていたことを解明するシリーズ(?)である「日常の世迷言」ですが、今日も以前から気になっていたことについて、お話しします。
さてたまには科学的なテーマのお話しをしましょう。
で、今日のお話しは「万能細胞」です。
ここのところずっと世間をにぎわせている「STAP細胞」ですが、今回はその一連の騒動のことではなく、これとよく混同される万能細胞についてお話ししてみたいと思います。
話しをわかりやすくするため、代表的な3つの万能細胞について整理してみましょう。
まず、これら万能細胞と呼ばれる細胞は、「幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞です。
何が特殊かといえば、多様な細胞に分化して増殖できる能力を秘めているところが普通の細胞と異なる点なのです。
生物の基本は細胞であり、どんなに複雑な構造や機能を持つ生物でも(例えばヒトでも)スタートはたった1個の受精卵だったわけです。
そこから分化を繰り返し、皮膚やら内蔵やら骨やら筋肉やら神経やら目やら耳やら口やら鼻やらになって行くわけですが、元をたどれば紛れもなくたった一つの受精卵細胞だったわけです。
この受精卵細胞に近い分化能力を持つ細胞を「幹細胞」(万能細胞)と呼ぶのです。
英語で書くと余計にわかりにくくなりますが、「stem cells(ステム セルス)」(ステムは幹や血統という意味)といい、臓器移植などに必要な「再生医療技術」のホープとして注目を浴びているのは聞いたことがあると思います。
そんな中で、代表的な万能細胞には3つあります。
「ES細胞」と「ips細胞」と「STAP幹細胞」です。
(注:STAP細胞とSTAP幹細胞の違いは後述します)
① ES細胞
これは「胚性幹細胞(embryonic stem cells)」のことで、字義通り生物の発生初段階である「胚」から得られるものです。
本当の意味で受精卵細胞にごく近い細胞です。
研究ではマウスのほかヒトの体外受精などで得る胚を用いることも可能なのですが、生殖技術の応用はどうしても倫理的な面で問題が多く、世界的に制限が設けられているのです。
はっきり申しますと、ES細胞の採取は受精卵を殺すことになるので倫理面の問題があるのです。受精卵といえば一つの「命」ですからね。
ちなみにES細胞は、受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を取り出し、それを培養することによって作製されます。
② ips細胞
ES細胞に対して、ips細胞は「人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)」といって、「受精卵」以外から得られる幹細胞を指します。
この技術を使うと、例えば患者自身の「身体の細胞」をモトに「ips細胞」を作り出し、そこから必要な体の組織を作って患者自身の必要な患部に使う、といった治療が可能になるわけです。
これなら、ES細胞と違って倫理的な問題点が解消するので、脚光を浴びたわけです。
この「ips細胞」の作製を世界で初めて成功させたのが、京都大学の山中伸弥教授です。
体細胞が多能性幹細胞に変わることを、専門用語で「リプログラミング」と言います。
山中教授のグループが見出したわずかな因子で「リプログラミング」を起こさせる技術は、再現性が高く、また比較的容易であり、幹細胞研究における画期的な発見と言えるのです。
iPS細胞は患者自身の皮膚や血液など、採取しやすい体細胞を使って作ることができます。
また、ES細胞と違って、iPS細胞は患者自身の細胞から作製することができ、分化した組織や臓器の細胞を移植した場合、拒絶反応が起こらないと考えられる点が画期的なのです。
一方、デメリットとしてはヒトでも近々適応が期待されてはいますが、胎盤など、一部の細胞になれなかったり、癌への変異の可能性が高いという点があげられます。
③ STAP(幹)細胞

< STAP細胞 > ※ わかりやすくするため緑色にマーキング(着色)しています。
先ほど、「これら万能細胞と呼ばれる細胞は、「幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞です」と書きましたが、実はこれは前述した2つ(ES細胞とips細胞の2つ)のことです。この両者は「幹細胞」です。
「幹細胞」でないと厳密には万能細胞ではないからです。
ところが、STAP細胞は「幹細胞」ではありません。
この点がややこしいので、よく注意して読んでくださいね。
というのも、いろいろな記事を読むにつけ、STAP細胞とSTAP幹細胞を混同している記述があまりにも多いからです。
まず、2014年1月、幹細胞ではない「多能性細胞(STAP細胞)」とそれに増殖性を持たせた「STAP幹細胞」が理研の小保方晴子研究ユニットリーダーによって、報告されました。
「STAP細胞」は、正式名称は「刺激惹起性多能性獲得細胞」(しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう)と言い、刺激(ストレス)を与えることによって多くの細胞に変化できる「分化多能性」を持った細胞のことを指します。
「惹起(じゃっき)」とは何かが引き起こされることで、この場合刺激で多能性の獲得が起きる、という意味です。
「STAP」とは、「刺激惹起性多能性獲得」を英語表記した際の「Stimulus Triggered Acquisition of Pluripotency」の頭文字からとったものです。
つまり、「刺激惹起性多能性獲得(STAP)」という、刺激を加えて初期化を行い多能性を獲得させる方法を行って作り出した細胞を「STAP細胞」と呼びます。
もっとわかりやすく言うと、ある細胞にストレスを与え続けると、そのストレス(刺激)によって一部が「初期化」するのです。
「初期化」ということは、言い換えると「多能性を持つ」ことを言います。
しかし、ここが重要でしかもマスコミの報道ではあまりなされていない点なのですが、「STAP細胞」と「STAP幹細胞」の違いを理解しておくべきなのです。
「STAP細胞」のままでは幹細胞ではないので、多能性はありますが増殖できないのです。
増殖できなければ、医療の面ではあまり意味がありません。
そこで、もう一工程を掛けて、「STAP細胞」を「STAP幹細胞」に変化させる必要があるのです。
この点は、山中教授の説明を引用することにしましょう。
「細胞にストレスをかけてまずできるのはSTAP細胞です。
幹細胞というものは、多様な細胞へと分化する能力(多能性)と、自らと同じ能力の細胞へと分裂し続けられる能力(増殖能)を持たなければなりません。
STAP細胞は多能性を持ちますが、増殖できない細胞です。
基礎科学の観点では極めて興味深い細胞ですが、再生医療や創薬という医療応用の観点からは、そのままでは活用しにくいものです。
(小保方さんの)論文によれば、STAP細胞を特殊な培地で培養することで一部の細胞が増殖する能力を獲得し、多能性と増殖能を併せ持つSTAP幹細胞へと変化します。
iPS細胞やES細胞は多能性と増殖能を持つ「幹細胞」ですので、これらと比較すべきはSTAP細胞ではなく、STAP幹細胞なのです。」
ややこしいので、もう一度言いますと、ES細胞とips細胞は元々「幹細胞」ですから多能性と増殖能を併せ持っていますが、STAP細胞は多能性はありますが増殖能は持っていません。
つまり「幹細胞」ではありません。
この多能性を持つSTAP細胞を培養することで一部が増殖能力をも併せ持つSTAP幹細胞ができるのです。
ね?ややこしいでしょ!
続けましょう。
STAP細胞を説明している記述には次のようなものがあります。
「STAP細胞は、ips細胞と比べると、幾つかの優位性が認められます。
まず、作成にかかる時間は2日から7日で、そのうえ手間も少なく、3週間から4週間かかるiPS細胞と比べると、2週間以上短縮されるlことになります。
初期化率も、iPS細胞の数十倍と高いのです。最近、iPS細胞の作製の効率が飛躍的に伸びましたが、それ以上の効率です。
現在、作成方法が問題になっていますが、論文にある通りだとすれば、iPS細胞より数倍効率が良くなることは間違いありません。」
(ま、ここが本当なのか問題となっているわけですがね。)
「STAP細胞は、体のどの細胞にも変異することができます。また、生産も安易で、効率も良く、デメリットはほぼ皆無と言う識者もいます。
この細胞のおかげで、脊髄の損傷などといった大変治療しにくい部位の治癒が他の幹細胞と比べ、安易に可能となるのです。
だから、小保方さんのお説が本当ならば、非常に医学界というか患者さんにとって朗報となるのです。
ただ、STAP細胞も癌になる可能性はあり、iPS細胞も癌になる可能性が指摘されていましたがかなり改善しているため、この点においては同等と言えそうです。」
以上のとおり、STAP細胞が事実ならば、長所が多いので非常に画期的ではあります。
ですが、これらの記述もSTAP細胞とSTAP幹細胞を混同しているように思えます。
山中教授の言うようにips細胞と比較すべきは、STAP細胞ではなく、本来同じように増殖能力を持つSTAP幹細胞の方なのです。
そうでないとフェアな比較とは言えないでしょう。
ですから、本当はSTAP細胞からSTAP幹細胞に至る日数もカウントして比較しないとフェアではないと思うのです。
さらに、山中教授は「STAP幹細胞においては、半数以上の細胞が死滅するようなストレスが細胞にかかることもあり、細胞内における遺伝子の状態がどうなっているか、まだ十分にはわかっていません。そのため、安全性については、人間の細胞でSTAP幹細胞が樹立された後に、動物実験等で十分に検証される必要があります。(小保方さんの)論文の記載によると分化細胞からSTAP細胞へ誘導すると、およそ8割の細胞が死滅し、生き残った細胞のうちの3分の1から2分の1が、つまり元の分化細胞の約10%がSTAP細胞と考えられます。さらに、STAP細胞からSTAP幹細胞への変換効率は10回に1、2回とあります。つまりips細胞と比較すべきSTAP幹細胞の変換効率で言えば、むしろips細胞の方が優位と言えます。」という指摘もしています。
また、「iPS細胞に高い再現性と互換性があることは、この技術が世界中で急速に普及した原動力となりました。他の多能性幹細胞技術(例えば、MAPC細胞; Jiang et al., Nature 2002)は、当時、大きなニュースとなりましたが、再現性と互換性が十分ではなく普及しませんでした。STAP幹細胞についても、広く普及するには再現性や互換性の検証が重要な課題になります。」という重要なポイントを挙げています。
ご存知の方も多いと思いますが、理研は「小保方さんの論文はNO!」という判断をしました。
一方で、上記のように山中教授の指摘も的を射ています。
STAP細胞(幹細胞)については、今後の展開にまだまだ目が離せませんね。
(以上、 sugar こと 相川正也 でした。)
.
日頃から気になっていたことや、わからないままにしていたことを解明するシリーズ(?)である「日常の世迷言」ですが、今日も以前から気になっていたことについて、お話しします。
さてたまには科学的なテーマのお話しをしましょう。
で、今日のお話しは「万能細胞」です。
ここのところずっと世間をにぎわせている「STAP細胞」ですが、今回はその一連の騒動のことではなく、これとよく混同される万能細胞についてお話ししてみたいと思います。
話しをわかりやすくするため、代表的な3つの万能細胞について整理してみましょう。
まず、これら万能細胞と呼ばれる細胞は、「幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞です。
何が特殊かといえば、多様な細胞に分化して増殖できる能力を秘めているところが普通の細胞と異なる点なのです。
生物の基本は細胞であり、どんなに複雑な構造や機能を持つ生物でも(例えばヒトでも)スタートはたった1個の受精卵だったわけです。
そこから分化を繰り返し、皮膚やら内蔵やら骨やら筋肉やら神経やら目やら耳やら口やら鼻やらになって行くわけですが、元をたどれば紛れもなくたった一つの受精卵細胞だったわけです。
この受精卵細胞に近い分化能力を持つ細胞を「幹細胞」(万能細胞)と呼ぶのです。
英語で書くと余計にわかりにくくなりますが、「stem cells(ステム セルス)」(ステムは幹や血統という意味)といい、臓器移植などに必要な「再生医療技術」のホープとして注目を浴びているのは聞いたことがあると思います。
そんな中で、代表的な万能細胞には3つあります。
「ES細胞」と「ips細胞」と「STAP幹細胞」です。
(注:STAP細胞とSTAP幹細胞の違いは後述します)
① ES細胞
これは「胚性幹細胞(embryonic stem cells)」のことで、字義通り生物の発生初段階である「胚」から得られるものです。
本当の意味で受精卵細胞にごく近い細胞です。
研究ではマウスのほかヒトの体外受精などで得る胚を用いることも可能なのですが、生殖技術の応用はどうしても倫理的な面で問題が多く、世界的に制限が設けられているのです。
はっきり申しますと、ES細胞の採取は受精卵を殺すことになるので倫理面の問題があるのです。受精卵といえば一つの「命」ですからね。
ちなみにES細胞は、受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を取り出し、それを培養することによって作製されます。
② ips細胞
ES細胞に対して、ips細胞は「人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)」といって、「受精卵」以外から得られる幹細胞を指します。
この技術を使うと、例えば患者自身の「身体の細胞」をモトに「ips細胞」を作り出し、そこから必要な体の組織を作って患者自身の必要な患部に使う、といった治療が可能になるわけです。
これなら、ES細胞と違って倫理的な問題点が解消するので、脚光を浴びたわけです。
この「ips細胞」の作製を世界で初めて成功させたのが、京都大学の山中伸弥教授です。
体細胞が多能性幹細胞に変わることを、専門用語で「リプログラミング」と言います。
山中教授のグループが見出したわずかな因子で「リプログラミング」を起こさせる技術は、再現性が高く、また比較的容易であり、幹細胞研究における画期的な発見と言えるのです。
iPS細胞は患者自身の皮膚や血液など、採取しやすい体細胞を使って作ることができます。
また、ES細胞と違って、iPS細胞は患者自身の細胞から作製することができ、分化した組織や臓器の細胞を移植した場合、拒絶反応が起こらないと考えられる点が画期的なのです。
一方、デメリットとしてはヒトでも近々適応が期待されてはいますが、胎盤など、一部の細胞になれなかったり、癌への変異の可能性が高いという点があげられます。
③ STAP(幹)細胞

< STAP細胞 > ※ わかりやすくするため緑色にマーキング(着色)しています。
先ほど、「これら万能細胞と呼ばれる細胞は、「幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞です」と書きましたが、実はこれは前述した2つ(ES細胞とips細胞の2つ)のことです。この両者は「幹細胞」です。
「幹細胞」でないと厳密には万能細胞ではないからです。
ところが、STAP細胞は「幹細胞」ではありません。
この点がややこしいので、よく注意して読んでくださいね。
というのも、いろいろな記事を読むにつけ、STAP細胞とSTAP幹細胞を混同している記述があまりにも多いからです。
まず、2014年1月、幹細胞ではない「多能性細胞(STAP細胞)」とそれに増殖性を持たせた「STAP幹細胞」が理研の小保方晴子研究ユニットリーダーによって、報告されました。
「STAP細胞」は、正式名称は「刺激惹起性多能性獲得細胞」(しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう)と言い、刺激(ストレス)を与えることによって多くの細胞に変化できる「分化多能性」を持った細胞のことを指します。
「惹起(じゃっき)」とは何かが引き起こされることで、この場合刺激で多能性の獲得が起きる、という意味です。
「STAP」とは、「刺激惹起性多能性獲得」を英語表記した際の「Stimulus Triggered Acquisition of Pluripotency」の頭文字からとったものです。
つまり、「刺激惹起性多能性獲得(STAP)」という、刺激を加えて初期化を行い多能性を獲得させる方法を行って作り出した細胞を「STAP細胞」と呼びます。
もっとわかりやすく言うと、ある細胞にストレスを与え続けると、そのストレス(刺激)によって一部が「初期化」するのです。
「初期化」ということは、言い換えると「多能性を持つ」ことを言います。
しかし、ここが重要でしかもマスコミの報道ではあまりなされていない点なのですが、「STAP細胞」と「STAP幹細胞」の違いを理解しておくべきなのです。
「STAP細胞」のままでは幹細胞ではないので、多能性はありますが増殖できないのです。
増殖できなければ、医療の面ではあまり意味がありません。
そこで、もう一工程を掛けて、「STAP細胞」を「STAP幹細胞」に変化させる必要があるのです。
この点は、山中教授の説明を引用することにしましょう。
「細胞にストレスをかけてまずできるのはSTAP細胞です。
幹細胞というものは、多様な細胞へと分化する能力(多能性)と、自らと同じ能力の細胞へと分裂し続けられる能力(増殖能)を持たなければなりません。
STAP細胞は多能性を持ちますが、増殖できない細胞です。
基礎科学の観点では極めて興味深い細胞ですが、再生医療や創薬という医療応用の観点からは、そのままでは活用しにくいものです。
(小保方さんの)論文によれば、STAP細胞を特殊な培地で培養することで一部の細胞が増殖する能力を獲得し、多能性と増殖能を併せ持つSTAP幹細胞へと変化します。
iPS細胞やES細胞は多能性と増殖能を持つ「幹細胞」ですので、これらと比較すべきはSTAP細胞ではなく、STAP幹細胞なのです。」
ややこしいので、もう一度言いますと、ES細胞とips細胞は元々「幹細胞」ですから多能性と増殖能を併せ持っていますが、STAP細胞は多能性はありますが増殖能は持っていません。
つまり「幹細胞」ではありません。
この多能性を持つSTAP細胞を培養することで一部が増殖能力をも併せ持つSTAP幹細胞ができるのです。
ね?ややこしいでしょ!
続けましょう。
STAP細胞を説明している記述には次のようなものがあります。
「STAP細胞は、ips細胞と比べると、幾つかの優位性が認められます。
まず、作成にかかる時間は2日から7日で、そのうえ手間も少なく、3週間から4週間かかるiPS細胞と比べると、2週間以上短縮されるlことになります。
初期化率も、iPS細胞の数十倍と高いのです。最近、iPS細胞の作製の効率が飛躍的に伸びましたが、それ以上の効率です。
現在、作成方法が問題になっていますが、論文にある通りだとすれば、iPS細胞より数倍効率が良くなることは間違いありません。」
(ま、ここが本当なのか問題となっているわけですがね。)
「STAP細胞は、体のどの細胞にも変異することができます。また、生産も安易で、効率も良く、デメリットはほぼ皆無と言う識者もいます。
この細胞のおかげで、脊髄の損傷などといった大変治療しにくい部位の治癒が他の幹細胞と比べ、安易に可能となるのです。
だから、小保方さんのお説が本当ならば、非常に医学界というか患者さんにとって朗報となるのです。
ただ、STAP細胞も癌になる可能性はあり、iPS細胞も癌になる可能性が指摘されていましたがかなり改善しているため、この点においては同等と言えそうです。」
以上のとおり、STAP細胞が事実ならば、長所が多いので非常に画期的ではあります。
ですが、これらの記述もSTAP細胞とSTAP幹細胞を混同しているように思えます。
山中教授の言うようにips細胞と比較すべきは、STAP細胞ではなく、本来同じように増殖能力を持つSTAP幹細胞の方なのです。
そうでないとフェアな比較とは言えないでしょう。
ですから、本当はSTAP細胞からSTAP幹細胞に至る日数もカウントして比較しないとフェアではないと思うのです。
さらに、山中教授は「STAP幹細胞においては、半数以上の細胞が死滅するようなストレスが細胞にかかることもあり、細胞内における遺伝子の状態がどうなっているか、まだ十分にはわかっていません。そのため、安全性については、人間の細胞でSTAP幹細胞が樹立された後に、動物実験等で十分に検証される必要があります。(小保方さんの)論文の記載によると分化細胞からSTAP細胞へ誘導すると、およそ8割の細胞が死滅し、生き残った細胞のうちの3分の1から2分の1が、つまり元の分化細胞の約10%がSTAP細胞と考えられます。さらに、STAP細胞からSTAP幹細胞への変換効率は10回に1、2回とあります。つまりips細胞と比較すべきSTAP幹細胞の変換効率で言えば、むしろips細胞の方が優位と言えます。」という指摘もしています。
また、「iPS細胞に高い再現性と互換性があることは、この技術が世界中で急速に普及した原動力となりました。他の多能性幹細胞技術(例えば、MAPC細胞; Jiang et al., Nature 2002)は、当時、大きなニュースとなりましたが、再現性と互換性が十分ではなく普及しませんでした。STAP幹細胞についても、広く普及するには再現性や互換性の検証が重要な課題になります。」という重要なポイントを挙げています。
ご存知の方も多いと思いますが、理研は「小保方さんの論文はNO!」という判断をしました。
一方で、上記のように山中教授の指摘も的を射ています。
STAP細胞(幹細胞)については、今後の展開にまだまだ目が離せませんね。
(以上、 sugar こと 相川正也 でした。)
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Posted by スタッフブログ『ひのき同好会』 at 21:14│Comments(0)
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